■ 空を仰いで  VOL,3

そうして兵士達は行動を開始した。 問題が解決(?)した事で全員のわだかまりは無くなり、 容疑者である幹部達に対し全員情け容赦が無かった。 その、兵士達の恐ろしい気迫の篭った尋問で連行された幹部達は早速、 知っている事を洗いざらい全部喋った。

結果―――カーツが反セシル派全員を集ようとしてセシルを王の座から失脚させようとし、 王家転覆を図ろうとしていた事が判明。
「………………」
この時点でカーツは権威の全てを剥奪。 国家反逆罪でバロン中に指名手配。 全世界にも要請をするつもりだったという。赤い翼が盗まれなければ。
「他のエンジンは壊されてた…」
「なあ、ローザにシドさんよ」
次第に状況を説明するローザの口調も荒くなって気始めたところで 真剣な面持ちで聞いていたエッジがstopをかけた。はっと説明を止めるローザ。 シドもエッジに注目する。
「カーツって野郎は反セシル派を集めようとしていたんだよな?」
「?え、ええ」
エッジの言いたい事が今ひとつ分からないローザ。
「………反セシルって団体さんは、カーツ以外は全員まだバロンにいたんだよな?」
「!!」
ここで、やっとエッジの言わんとしている事がシドには理解できた。 ローザはまだよく分かっていない。 いや、正確には分かりかけているのに、頭が理解する事を拒んでいる。
エッジはこう言って説明し始めた。

「つまり、カーツって奴はまだ何もしちゃいない」
反セシル派のちから権力を強めてから、セシルを拉致するだの暗殺するだのを考えたのだろう。
だが、
「そうする前に赤い翼の廃止が決まりやがった…」
あの戦力が廃止されてしまっては、 バロンの…『世界最強の軍事国家』の国王になった意味など無い。 ただ、王になりたいだけならばこの時期を選ばなくてもいいはず。 ぐずぐずしていたら赤い翼、という軍隊はこの世から姿を消してしまう。 だからこそ、カーツは単独ででも行動を開始する必要があった。
仲間の準備や行動の計画をしていては時間がかかりすぎて、赤い翼はなくなってしまう。 それほどにも、セシルは赤い翼の廃止にまず全力を取り組んでいた。
過去の過ちを繰り返させないために…
「それで・だ、セシルが居なくなったって事は拉致するのに成功したんだろうな。 …殺された、って可能性はまず・無いな。そんなにやわじゃないし。な、ローザ」
ローザは強くうなずく。エッジの推理は問題のところに入っていく。
セシルをどうにか拉致するのに成功したカーツ。 だが、見回りの兵士が早速セシルが居なくなっている事に気付いた。 まだ、カーツは脱出の準備すら、できてなかったのに、だ。 そうなっては貧弱な幹部が大の大人を一人連れて世界最強の、 しかも国王失踪ということでいつもにまして警備の目を鋭くしていた兵士に気付かれること無く、 城を脱出する事は、まず不可能だ。
「要するにカーツってのはセシルを連れ出すのに成功したはいいが バロンの警備が思ってたより厳しい事を知り、 逃げ出せなかったから城のどっかに隠れてたんじゃねぇか? だから、国王失踪、 という厳戒態勢の中をおっさん一人がセシルを連れて易々と飛行艇を盗み出せたんじゃねぇか? 城から抜け出すのは、 兵士達の目が外へ向いている時に城の中から飛行艇を 使って外へ逃げ出す事しか方法は無かったはずだからな」
そう――― シド達は当初、セシルを何らかの方法で拉致したカーツは何らかの方法で城を脱出し、 何らかの方法で赤い翼を盗み出し、 何らかの方法で誰にも気付かれる事無く残りのエンジンを破壊―――と思っていた。
しかし、エッジによると、 充分な用意をしていないままセシルを拉致し、 結果計算より早く兵士に見つかり、 計算より早く城の警備体制が始まり城のどこかに隠れたまま動けなくなってしまった。 そこで何日かして兵士達が犯人は城の外に逃げたのだと外へ追跡を始めた時に 赤い翼・飛行艇を収納していたデッキに、易々と潜入。 その内の一機だけを残して後のエンジンを破壊した、というわけらしい。

―ただあのセシルを一人で拉致し、逃げ出すまで何もさせなかった、 というのがひっかかるがな

シドにはあの旅でのエッジの言動、 行動においてしても彼がこんなに頭がきれるとは思わなかったのである。
「素晴らしいぞ!エブラーナ国王!どうしてその頭脳をあの旅で見せてくれんかった!」
「…………おい…………じいさん…………」
「いや、今のは忘れてくれ」
「凄いわエッジ!」
シドもローザですら、エッジを称えていた。
その部屋は始めの雰囲気はどこへいったのか、異様な雰囲気がうずまいていた。
「いや、なに、当たり前のことをしただけさ。もっとほめてくれ」
ドンドンドン!!
唐突に部屋の扉が乱暴に叩かれた。 部屋の中の返事も待たずに扉が開けられたのと、 4人がビックリして扉の方を注目したのはほぼ同時だった。
「失礼いたします!バロン国王妃ローザ様に緊急の伝書鳩がバロンより届けられました!」
部屋に入ってきた男の手には手紙が握られていた。
「私に?!」「緊急じゃと?!」「バロンから?!」
ローザの返事を待たずに男はその手の手紙をローザに手渡した。 黙って受け取るローザ。少し開けられていない手紙を見つめていると、エッジの体が光りだした。
「お…王?!」
4人の後ろに控えていた大臣が声を出した。 何事かと振り向いた順番にエッジの変化に気付く。
「え……エッジ?!」「エブラーナ国王?!」
「………………これは…………」
するとエッジは腰に下げてあった一本の刀を取り出した。
それはあの時の戦いに月で手に入れた、月の精製武器・ムラサメだった。 月でしか採取できない金属で作られ、月の民が精製した武器だった。
「何………?……え?!」
ムラサメに導かれるように、ローザのもつ【賢者の杖】と呼ばれるものも光を放っていた。 これも、月でしか採取できない金属で作られ、月の民が精製した武器だった。
バロンにはもう一つ、セシルの持つ、月の民の最強精製武器【ラグナロク】が安置されている。 しかしローザの【賢者の杖】と共鳴し、光を放つという事は、今迄一度も無かった。
何故、今なのか。月の民をまとめるフースーヤの血をひくセシルの失踪中の今なのか。
答えは分かるようで分からない。
月の民の精製武器は何かのメッセージを訴えているかのように光を放ち続けている。
「とにかく、手紙を読んでみろ、ロ−ザ!」
エッジに言われて、初めて気がついたかのように手に持っていた手紙を慌てて広げてみた。 ローザは黙って手紙に走っている文字を読む。
徐々に、ローザの表情が変わっていく。
「…………エッジ、シド、今すぐバロンに行くわよ」
とだけ言い、ローザは荷物を手に取った。 二人の返事を待たないうちにいそいそと準備をずるローザ。急に指名されて動きが止まる二人。
月の精製武器の発光はその頃にはもう収まっていた。 「
一度、ミシディアに行って長老にお願いしてデビルロードを使わせてもらうわ。 その方が早いはずよ」
「ま、待てよローザ!一体なんだってんだ?」
といいつつエッジも準備をし始めた。 この女性が何の考えも無くあんな事を言うはずが無い。 行動には従うが、理由を聞かずに入られなかった。
金髪の女性は振り向きもせずに答えた。
「カインとリディアがバロンに来ているそうよ!」

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